複合機・コピー機の導入、リースと買取どちらが最適?

複合機・コピー機は、オフィス業務の効率化に欠かせない設備のひとつです。
書類の印刷・コピーに加え、スキャンによるペーパーレス化やクラウド連携、個人情報保護など、用途は近年さらに広がりを見せています。
一方で、「リースすべき?買取すべき?」という疑問は、導入時に必ず発生する大きな検討事項です。ただし、複合機の導入は頻繁に経験することではなく、判断に迷う企業担当者も少なくありません。
本記事では、
- リースと買取の違い
- メリット・デメリット
- コスト関連
- どちらを選べばよいか
をわかりやすく解説し、初めて複合機導入を担当する方でも判断できるようになることを目的としています。
複合機導入で失敗しないためのポイント
まずは、導入を検討する際に意識しておきたいポイントを押さえながら見ていきましょう。
- 導入目的の明確化
- 印刷頻度や用途によって最適な機種・契約が変わります
- ランニングコストを考える
- 最安の本体価格を選んでも、印刷コストが高ければ割高になります
- 保守契約が重要
- トラブル時の対応や維持費に大きく影響します
- 契約期間と更新タイミング
- リースは原則、途中解約ができません
- リース・買取の総支払額比較
- 「安く見える」だけで判断しないようにしましょう
複合機導入の検討チェックリスト
導入担当者として、以下の項目を事前に確認しておくとスムーズです。
| チェック項目 | 内容例 |
|---|---|
| 印刷枚数 | 月間のカラー/モノクロの出力量 |
| 用途 | 印刷、FAX、スキャン、クラウド連携 |
| 設置場所 | 電源・ネットワーク・スペース |
| セキュリティ | 認証印刷・保存データ管理 |
| 予算 | 初期費用・月額費用 |
| 契約期間 | 5年リース、スポット購入など |
| 保守形態 | カウンター契約の有無 |
複合機・コピー機とは?
複合機・コピー機は、オフィスに欠かせない代表的な業務機器です。
一見同じように思えますが、役割や機能には明確な違いがあります。
ここでは、導入を検討する際に押さえておきたい基本的な種類と特徴を整理します。
複合機とコピー機の違い
| 項目 | 複合機 | コピー機 |
|---|---|---|
| 主な機能 | コピー+プリント+FAX+スキャンなど | コピーのみ |
| ネットワーク接続 | 可能(標準) | 不可または限定的 |
| 用途 | オフィス全般の文書処理 | コピー用途に限定 |
| 拡張性 | 高い | 低い |
| 現在の主流 | ◎ | △(ほぼ複合機へ移行) |
かつてはコピー機が主流でしたが、近年はプリント・スキャンなどを一体化した「複合機」が一般的になっています。
複合機を導入することで、多様な文書処理をまとめて管理でき、オフィスの業務効率向上に繋がります。
最近の複合機が持つ追加機能
複合機は昔に比べて多機能化が進み、以下のような高度な機能を備えています。
- スキャン to メール・フォルダ
- スマホ印刷(モバイルプリント)
- クラウド連携(Google Drive / Dropbox 等)
- ユーザー認証印刷(ICカード等)
- セキュリティ強化(暗号化・ログ取得)
- 自動両面印刷
- OCR(文字認識)
特に「クラウド連携」「セキュリティ機能」は、テレワーク・ペーパーレス化が進む中で評価が高まっています。
リース方式のメリット・デメリット
複合機の導入方法として最も一般的なのがリース契約です。多くの企業が採用しているのは、初期費用を抑えられたり、最新機器を使えたりするためです。
ただし、制約がある契約形態でもあるため、メリットとデメリットを理解したうえで選ぶ必要があります。
リース方式のメリット
初期費用を抑えられる
リースの最大の特徴は、一括購入の必要がないという点です。導入時に大きな資金を用意する必要がなく、月額料金のみでスタートできます。特に予算が限られている企業にとって、導入ハードルの低さは大きな魅力です。
たとえば、同じ機種を購入する場合、数十万円の費用が必要なところ、リースであれば毎月一定額を支払うだけで利用できます。資金を他の投資に回しながらオフィス環境を整えられるのは、リースならではの利点といえるでしょう。
最新機器を導入しやすい
複合機は年々性能が向上しています。
リース契約は契約期間が決まっているため、契約満了後に新しい機器へ入れ替える流れが自然に生まれます。
技術進化のスピードが速い複合機において、常に最新機種を導入しやすい点はメリットです。
クラウド連携やセキュリティなど、業務ニーズに応える最新機能を取り入れやすいため、中規模以上のオフィスでの導入にも適しています。
会計処理がシンプル(※)
リース料は毎月の経費として処理できます。
複合機を資産として計上し、減価償却する複雑な処理が不要なため、管理がスムーズです。
総務業務と経理業務を兼務している方にとって、会計処理の手間が少ないのは意外と大きなポイントです。
※大企業や上場企業、または契約内容によっては、リースであっても資産計上が必要な場合があります。
導入・管理の手間が少ない
リースの場合、機器の手配や設置は販売店・保守業者が対応します。
また、故障時の対応も保守契約(通常は同時に契約)を併用することでスムーズに行われます。
社内で詳細なメンテナンスをする必要はなく、管理負担は比較的軽く済みます。
リース方式のデメリット
中途解約ができない
リースは契約期間中の解約が原則不可です。
途中で印刷量が減ったり、オフィスレイアウトが変わって複合機が不要になったりしても、期間満了までは支払いが続きます。
やむを得ず解約する場合でも残りのリース料(残債)を一括で払う必要があるケースが多く、柔軟性は高くありません。
長期的な総額は購入より高くなることが多い
毎月の支払いは小さく見えても、リース料には金利や手数料に相当する費用が含まれるため、長い期間で見れば総額が高くなる傾向があります。
機種や契約条件によって異なるものの、結果的に本体価格を上回る支払いになるケースは珍しくありません。
また、保守料金(カウンター料金)を含めたトータルコストで考えることが重要です。
機種の選択や変更に制限がある
リース契約では、契約期間中の機種変更が難しく、途中で「もっと高性能な機種に変えたい」と考えても対応できないケースが多いです。
業務内容の変化に合わせて柔軟に入れ替えることは苦手で、運用の自由度は高くありません。
所有権がない
リースした機器はあくまで「借り物」です。
返却を前提に利用するため、不要になった際に売却して費用を回収する選択肢はありません。
また、機器の取り扱いにも制限がある場合があり、資産として活用できない点はデメリットといえるでしょう。
リース方式はこんな企業に向いている
リースは、「初期費用を抑えたい」「最新機器を使い続けたい」「会計処理をシンプルにしたい」というニーズがある企業に向いています。
特に、スタートアップや部署の立ち上げなど、変化に対応しながら運用する場合に採用されることが多い方式です。
買取方式のメリット・デメリット
複合機の導入方法として、もうひとつの選択肢となるのが買取(購入)です。
一括購入のイメージが強いですが、分割(割賦)で導入できる場合もあり、支払い方法には幅があります。
リースとは異なり、導入後の扱いに自由度がある点が特徴です。
ここでは、総務担当者が押さえておくべき買取方式の利点と注意点を整理します。
買取方式のメリット
総額コストを抑えやすい
買取方式の最大のメリットは、長期利用の場合、トータルの支出がリースより少なくなる可能性が高いことです。購入した時点で費用が確定するため、長期間使い続けるほど費用対効果が高まります。
リースは毎月の支払いにリース料率(金利・手数料相当)が含まれるため、結果として総額が高くなる傾向があります。一方で、買取の場合は本体価格のみが基本となります。また、カウンター契約の料金はリースと同条件であることがほとんどのため、本体代金の違いがそのままコスト差につながります。
自由度が高い
買取は複合機を「自社の所有物」として扱うため、機器の使い方に制約がほとんどありません。不要になれば売却することも可能で、社内レイアウトや運用方針が変わった際の対応がしやすくなります。
さらに、契約期間による縛りがないため、必要に応じて機種の買い替えタイミングを自由に決められる点も魅力です。
中途解約の概念がない
リースの場合は契約期間が固定で、途中解約ができませんが、買取にはその概念がありません。
たとえば、業務内容の変化で印刷量が大幅に減ったとしても、残りの契約期間を気にする必要がなく、柔軟に運用できます。
資産として計上できる
購入した複合機は、企業の資産として計上できます。
減価償却により費用を計上できるため、会計上のコントロールを自社で行える点はメリットです。
資産管理の観点を重視する企業にとっては、買取のほうが馴染みやすい場合もあるでしょう。
買取方式のデメリット
初期費用が大きい
買取方式の最大のハードルは、導入時の支出が大きくなりやすいことです。高性能な複合機ほど価格は上がり、導入費用が数十万円になるケースも珍しくありません。
一括で支払う場合、他の投資に回せる資金が減ってしまう可能性があります。割賦(分割)を利用すれば月額負担を抑えられるものの、資産計上や支払い管理は必要です。
会計処理が複雑になる
購入した複合機は資産となるため、減価償却を行う必要があります。リースのように(条件によっては)毎月の支払いがそのまま経費になるわけではなく、年度ごとの処理が必要になるため、経理上の負担は増えます。
古くなると売却価値が下がりやすい
複合機は機能の進化が早く、数年が経過すると陳腐化し、中古市場でも価値が下がりやすい傾向があります。また、設置環境や使用状況によっては故障リスクも高まり、修理費がかさむこともあります。
そのため買取の場合は、長期保有することによるメンテナンスコストも考慮する必要があります。
保守契約の別途検討が必要
買取でも、保守契約(カウンター契約)は基本的に別途必要です。リースだから保守が付く、買取だから保守が不要というわけではありません。
そのため、本体価格・保守費用の2つを合わせた総額で比較検討することが大切です。
買取方式はこんな企業に向いている
買取方式は、「長期間使い続ける予定がある」「資産として管理したい」「初期費用を確保できる」という企業に向いています。
また、複合機の機種にこだわりがある場合や、機能更新の頻度が低い業務環境であれば、買取によりコストを最適化できる可能性があります。
リースと買取(購入)の基本比較
これまで解説した内容をまとめて比較するとこのようになります。
リースと買取の違いをまとめて比較
| 項目 | リース | 買取 |
|---|---|---|
| 所有者 | リース会社 | 自社 |
| 支払い | 月額固定 | 一括 or 割賦 |
| 初期費用 | ◎(ほぼ不要) | △(高め) |
| 会計処理 | 経費化(※条件あり) | 資産計上 |
| 中途解約 | ×(原則不可) | - |
| 契約期間 | 3〜6年 | なし |
| 機種変更 | △ | ○ |
| 法人審査 | あり | なし(※割賦は審査あり) |
| 保守契約 | 別契約 | 別契約 |
| 処分 | 返却 | 自社対応 |
| 管理コスト | 低い | やや負担 |
費用イメージの比較
| 項目 | リース | 買取 |
|---|---|---|
| 初期費用 | ほぼ0円 | 10〜60万円 |
| 月額 | 5,000〜20,000円 | なし |
| 契約期間 | 5〜7年 | なし |
| 合計コスト | 高くなりやすい | 比較的抑えられる |
一見すると、「初期費用がかからない」という点でリースは魅力的ですが、長期的に見れば買取のほうが総額が安くなるケースも少なくありません。
※金額は参考イメージです。
割賦(分割)の選択肢
なお、買取の中には「割賦(分割)」という支払い方法もあります。月額で支払いながら所有権を持てる方式で、「資産化しつつ、まとまった費用は避けたい」という場合に選ばれます。
リースと似ていますが、一般的には所有権が自社にある点、契約期間の縛りがない点が異なります。
| 項目 | リース | 割賦 |
|---|---|---|
| 所有権 | リース会社 | 自社 |
| 契約期間 | 固定 | 任意 |
| 途中解約 | 不可(残債一括) | 可能(残債一括返済など) |
| 資産計上 | 不要(※条件あり) | 必要 |
まとめ:結局、リースと買取どっちがいいの?
複合機・コピー機の導入方法として「リース」と「買取」がありますが、結論として「どちらが最適か」は会社の状況によって異なります。
判断の軸は、初期費用・利用期間・運用の自由度・会計処理の考え方です。
まず、手軽に始めたい、初期費用を抑えたい、最新機種を常に使いたいという場合は リースが有力な選択肢になります。
毎月の支払いは条件により経費処理でき、複雑な資産管理が不要で、導入・撤去までを任せられる点は大きな利点です。一方で、中途解約ができない、結果的に総額が高くなりがち、機種変更が自由にできないといった制約があるため、計画的な運用が求められます。
一方、長期的に使用する前提でコストを最小化したい、機器の運用や買い替えを柔軟に決めたい、資産として管理したいという場合は 買取が向いています。
総額費用を抑えやすく、使用しなくなった場合は売却も可能。ただし、初期費用が大きく、減価償却など経理負担は増えるため、管理体制の整備が必要です。
判断の目安としては、次のとおりです。
- 初期費用を抑えたい → リース
- 5年以上使い続ける可能性が高い → 買取
- 頻繁に機種更新したい/最新機能を重視 → リース
- 自由に処分・変更したい → 買取
迷ったら、まずは「導入目的」と「想定使用期間」を明確にすると方向性が定まります。
コストだけでなく、保守体制・機能・運用負担を含めて総合的に選ぶことが、失敗しない複合機導入の鍵となるでしょう。









































