インク型番の読み方|メーカー別命名ルールを解説

プリンターのインクを買おうとして、「似たような型番が多くて分かりづらい」と感じたことはありませんか?
実は、インクの型番にはメーカーごとに明確な命名ルールがあり、アルファベットや数字、末尾の記号にはそれぞれ意味があります。たとえば「BCI-381C」なら、シリーズ・世代・色を表しています。こうしたルールを知っておくことで、対応機種を正確に判断でき、購入ミスを防げます。また、「XL」などの表記が容量を示すこともあり、コスト面での選択にも役立ちます。
本記事では主要メーカーごとの命名ルールを整理し、インク型番の仕組みをわかりやすく解説します。
インク型番とは何か?基本構造を理解する
型番はインクを識別するための「製品コード」
プリンターインクの型番とは、製品を識別するために付けられた「製品コード」のようなものです。単なる番号ではなく、その中にはインクの種類・シリーズ・色・容量など、複数の情報が組み込まれています。メーカーによって表記の仕方は異なりますが、基本的な構造はおおむね共通しています。
基本構成:アルファベット+数字+記号
一般的には「アルファベット+数字+記号」という組み合わせで構成されます。アルファベットの部分はシリーズやインクの種類を、数字の部分は世代やプリンターの対応範囲を、そして末尾の記号は色や容量を示す場合が多いです。
たとえば「BCI-381C」であれば、BCIはキヤノンのインクシリーズを意味し、381が世代番号、Cがシアン(青)を示しています。
各メーカーの型番から分かること
型番は見た目以上に多くの情報を含んでいます。たとえば同じメーカーでも「BCI-351」と「BCI-381」では対応機種が異なり、プリンターに合わないインクを購入してしまうケースも少なくありません。逆に言えば、型番の構造を理解しておけば、似た名前の商品を正確に見分けることができるということです。
数字は「世代」や「対応範囲」を示す
また、型番は製品のアップデートにも関係しています。数字の部分が世代交代を意味することが多く、新しいプリンターに合わせて型番の数字が上がる傾向があります。そのため、古い機種を使っている場合は、販売終了や互換品の型番も確認しておくと安心です。
理解すれば購入ミスを防げる
型番の基本構造を把握しておくことで、購入の際に迷う時間を減らすことができます。次の章では、各メーカーがどのような命名ルールでインク型番を設定しているのかを、具体的な例を挙げて詳しく見ていきましょう。
Canon(キヤノン)のインク型番の読み方とルール
BCIとPGIの違いを押さえる
キヤノンのインク型番には「BCI」や「PGI」で始まるものが多く見られます。一般的に、PGI は顔料系ブラックを含む文書向け、BCI は写真印刷も想定したカラーインクを中心に展開されています。
数字はシリーズや世代を表す
「381」や「2300」といった数字部分は、プリンターの世代やシリーズを示します。新しい機種が登場するたびに数字が増えていく傾向があり、旧型との互換性がない場合がほとんどです。たとえば「BCI-351」と「BCI-381」は見た目が似ていますが、対応プリンターが異なります。購入の際は、数字の部分を特に注意して確認することが大切です。
XL表記は「大容量タイプ」
型番の末尾に「XL」が付く場合は、大容量タイプを意味します。(例:「BCI-381XL」)印刷頻度の高いユーザーに向けた仕様で、標準容量のインクより1枚あたりの印刷コストを抑えることができます。機種によっては小容量の「S」が用意されている場合もあります。
色記号で色を見分ける
型番の最後には「BK(ブラック)」「C(シアン)」「M(マゼンタ)」「Y(イエロー)」などの色記号が付きます。写真向けのプリンターでは、さらに「GY(グレー)」や「PC(フォトシアン)」といった補助色が含まれることもあります。
Canon型番の特徴まとめ
- BCI=染料インク(主にカラー・写真用)
- PGI=顔料インク(主に黒・文書用)
- 数字=シリーズ・世代
- XL=大容量(S=小容量)
- 色記号=BK/C/M/Y/GY/PC
EPSON(エプソン)のインク型番の読み方とルール
ICから始まるインク番号が基本
エプソンのインクは、ほとんどが「IC」で始まる型番で表されます。
数字がシリーズや世代を示す
数字部分はシリーズ番号を表しており、「50番台」「80番台」「90番台」などが存在します。数字が大きくなるほど、新しい世代や後継モデルであることが多いです。シリーズが異なれば(例:IC50とIC80)、互換性は基本的にありません。対応機種リストの確認が欠かせません。
CLは「カラーセット」を意味する
「CL」は“Color(カラー)”の略で、複数のインクがまとめられたセット商品を意味します。たとえば「IC6CL80」であれば、「6色パック(CL)」+「80番シリーズ」という構造です。単色の場合は「ICBK(ブラック)」「ICC(シアン)」などの個別表記になります。
Lは増量タイプ
型番の末尾に「L」が付いている場合は、増量(大容量)タイプを示します。例:「IC6CL80L」=標準容量よりもインク量が多いモデル。大量印刷を行う場合や、交換頻度を減らしたいユーザーに向いています。(ビジネスモデルでは「XL」が使われることもあります)
色記号で色の判別が可能
単色インクでは、末尾のアルファベットで色を区別します。「BK=ブラック」「C=シアン」「M=マゼンタ」「Y=イエロー」が基本で、写真印刷向けモデルでは「LC(ライトシアン)」「LM(ライトマゼンタ)」といった補助色が加わります。
EPSON型番の特徴まとめ
- IC:インクカートリッジ
- 数字:シリーズ・世代
- CL:カラーセット
- L:増量(大容量)タイプ
- 色記号:BK/C/M/Y/LC/LM
Brother(ブラザー)のインク型番の読み方とルール
LCで始まるインクが基本
ブラザーのインクカートリッジは、ほとんどが「LC」で始まる型番で表されます。この「LC」は、ブラザー製のインクを示す共通コードです。たとえば「LC3111BK」「LC412C」など、アルファベット2文字+数字の組み合わせで構成されています。
数字はシリーズや世代を表す
数字の部分はシリーズや世代を意味しており、数字が大きくなるほど新しい機種に対応しています。例として、「LC10」→「LC11」→「LC12」→「LC3111」→「LC412」というように進化しており、世代が変わるとインクの形状やICチップも変わります。旧世代との互換性はほとんどないため、購入時には「使用しているプリンターの型番」を必ず確認することが重要です。
XLは大容量タイプ
型番の末尾に「XL」が付く場合は、大容量モデルを意味します。例:「LC3111XL-BK」=LC3111シリーズの大容量ブラックインク。印刷頻度が高い場合は、XLタイプを選ぶことで交換回数を減らし、コストを抑えることができます。
色コードの読み方
色の識別は、末尾のアルファベットで行います。「BK=ブラック」「C=シアン」「M=マゼンタ」「Y=イエロー」という基本4色構成が一般的です。
ブラザーの特徴
ブラザーのプリンターは、キヤノンやHPの一部モデル(プリントヘッド一体型)とは異なり、インクタンクのみを交換する分離型が主流です。また、インクのチップ認識方式も世代によって異なるため、「純正」「互換」「リサイクル」などを選ぶ際は動作保証の有無を確認しておくと安心です。
Brother型番の特徴まとめ
- LC=液体カートリッジ
- 数字=シリーズ・世代
- XL=大容量タイプ
- 色記号=BK/C/M/Y
HP(ヒューレット・パッカード)のインク型番の読み方とルール
シンプルな「数字中心」の型番構成
HPのインクカートリッジは、他メーカーと比べて非常にシンプルな命名ルールが特徴です。 型番の多くは「HP+数字」で表され、アルファベットの記号が少ないのがポイントです。 たとえば「HP63」「HP178」「HP950」など、数字部分がそのままシリーズを示しており、インクの種類や対応機種を区別する基準になっています。
数字はシリーズ・用途を表す
数字の部分は、製品シリーズや用途の違いを表しています。たとえば「HP63」や「HP65」は家庭用プリンター向け、「HP950」や「HP973」などはビジネス用途のインクジェット複合機に対応しています。数字が大きくなるほど高機能モデルに使われる傾向がありますが、必ずしも世代順ではないため、「数字が近い=互換性がある」とは限りません。
XLは「大容量モデル」
HPインクの型番に「XL」が付く場合は、大容量タイプを示します。例:「HP63XL」=HP63シリーズの大容量モデル。標準タイプよりインク量が多く、印刷コストを抑えられます。また、一部の法人向けモデルでは「X」(例:HP 973X)が使われる場合もあります。
色別に型番が管理されている
HPインクは、同じ数字でも色ごとに型番が管理されているのが特徴です。たとえば「HP178BK(ブラック)」「HP178C(シアン)」「HP178M(マゼンタ)」「HP178Y(イエロー)」のように、基本の数字+色記号で管理されます。写真印刷向けのプリンターでは、これに「フォトブラック」や「グレー」などの追加色が加わります。
海外モデルとの違いに注意
HPのインクで特に注意したいのは、地域ごとの型番の違いです。同じプリンターでも、販売される国や地域によって対応するインクの型番が異なる「リージョンコード」が設定されていることがあります。たとえば、日本国内で「HP63」が指定されているプリンターが、欧米では「HP62」を指定しているケースがあります。並行輸入品や海外通販でインクやプリンター本体を購入する場合は、対応地域を必ず確認する必要があります。
※注意:並行輸入品や海外仕様品をご利用になる際には、必ず公式サポートページ(Ink & Toner – HP Support)をご確認ください。
HP型番の特徴まとめ
- 数字=シリーズ・用途の区別
- XL / X=大容量タイプ
- 色別で個別型番(例:178BK)
- 海外版は別番号になる場合あり(リージョンコードに注意)
- 色記号=BK/C/M/Y/フォトブラック/グレー
その他メーカー(リコー・コニカミノルタなど)のインク型番ルール
法人・業務向けプリンターが中心
リコーやコニカミノルタ、富士フイルム、京セラなどのメーカーは、主にオフィス用複合機や業務プリンターを展開しています。これらの機種では、インクカートリッジよりも「トナーカートリッジ」や「インクボトル」が主流であり、型番の付け方も家庭用プリンターとは異なります。
型番構成の基本パターン
型番の構成は、基本的に「製品ライン名+シリーズ番号+容量記号+色コード」で成り立っています。たとえばリコーでは、「RICOH トナー P 500H」や「SGカートリッジ GC41KH」などの表記が見られます。
- 「P」や「GC」=製品ライン(P=プリンター用トナー、GC=ジェルジェットインク)
- 「500」や「41」=シリーズ・世代を表す番号
- 「H」=High(大容量)を意味する容量記号
同様に、富士フイルム(旧ゼロックス)では「CT203335」などの型番が用いられ、数字部分に世代や対応機種の情報が含まれています。
色コードの読み方
これらのトナー・インクボトルでは、色を識別するために「BK(ブラック)」「C(シアン)」「M(マゼンタ)」「Y(イエロー)」といった表記が使われます。
容量表記と記号の意味
法人向けモデルでは、容量記号が明確に区分されていることが多く、「H(High=大容量)」「L(Low=標準または小容量)」などが使われます。このような表記を見れば、印刷コストや交換頻度の目安が分かります。
その他メーカーに共通する特徴
これらのメーカーは、インクやトナー単体よりもプリンター本体の型番との連動性を重視しています。つまり、トナー型番を覚えるよりも、「使用している複合機の型番(例:RICOH P 501)」を確認するほうが確実です。メーカー公式サイトでは、対応トナーやドラムが機種ごとに一覧化されており、それを基準に選ぶのが最も安全です。
その他メーカー型番の特徴まとめ
- 数字や英字の組み合わせで、シリーズ・容量・色を表す
- 「H」や「L」で容量を示す
- 色記号はBK/C/M/Yの4色が基本
- 機種名と強く紐づいており、型番単体では判別が難しい
間違えやすい型番の見分け方と注意点
海外版モデルとの違い
HPの項目で解説した通り、海外版と国内版で型番が異なるケースがあります。たとえば日本で「HP63」が指定されているプリンターでも、欧米モデルでは「HP62」が指定されている(リージョンコードが異なる)ため、並行輸入品のプリンターやインクでは使えないことがあります。
「対応」や「互換」の表記を正しく読む
通販サイトでは、「BCI-381対応」「IC80互換」などと書かれた製品が多数あります。この「対応」や「互換」とは「純正の型番と同じプリンターで使える互換品(非純正品)」という意味であり、純正インクそのものではありません。同じ型番を名乗っていても、認識チップや色味、耐久性が異なる場合があるため、信頼できるメーカーや販売店から購入するのがおすすめです。
型番の数字が似ていても互換性はない
型番の数字が似ていても(例:キヤノンのBCI-351とBCI-381)、プリンターの型式やシリーズが違うと使えません。「同じ数字=同じ製品」と思い込まず、必ずプリンター機種名とセットで対応表を確認する習慣を持つと安心です。
まとめ
インクの型番は「メーカーの言語」です。アルファベットは系統やインク種、数字はシリーズや世代、末尾記号は色や容量を示します。仕組みを理解しておけば、店頭や通販で似た型番が並んでも、対応機種・容量・色を自力で判別でき、購入ミスや無駄な在庫を防げます。
最後に、実務で役立つ最小チェックリストがこちらです。
- プリンター機種名と完全一致する対応表を確認
- 型番の数字(シリーズ/世代)を照合
- 末尾の色記号・容量記号(XL/Lなど)を確認
- “対応・互換”は純正同一ではない点を理解
- 海外版の可能性(特にHPなど)に注意
「なんとなく選ぶ」から「読んで確信して選ぶ」へ。型番を読む力をつけて、品質・コスト・手間のすべてを最適化していきましょう。















